2013年3月26日火曜日

コスト効果について真剣に考えてみよう☆1人が1年長く元気に過ごすために2400万円!?


「CORE Journal 循環器」では,10件のCQについて文献検索を行い,検索された論文のエビデンステーブル(文献概要)を掲載しています。先週,本誌第3号に掲載するエビデンステーブルの内容確認を兼ね,武蔵国分寺公園クリニックの名郷直樹先生にお話しを伺ってきました。

「きょう話した内容は,論文の読み取り方のトレーニングとして相当勉強になると思いますよ」と名郷先生。詳しくは,本誌の「エビデンス解説」というミニコーナーで紹介しますので,ご覧いただけると嬉しいです。このブログでも一部を紹介していきたいと思います!

コスト効果について真剣に考えてみよう☆1人が1年長く元気に過ごすために2400万円!?


CQ:低リスク患者に対するスタチン治療は必要か?
で検索した,5件の論文について伺っていたときのことです。

 リスクが低い人にもスタチンを投与していたら,社会保険制度は崩壊しますね

↑えっ…でも日本のMEGA試験(PMID:17011942)などでスタチンは冠動脈心疾患を有意に低下させることが示されています。

― たしかに,何もしなければ起こるイベントが年間0.5%のところを,スタチンで0.33%まで減らせます。でも,オランダのコスト効果の検討によると(PMID:21450800),10年で5%にイベントが発生すると推定される低リスク層では,45歳男性1人が1年長く元気で過ごすためにはスタチンに2400万円を払い,75歳男性ではスタチンに520万円を払う必要があると試算されています。

↑…2400万…。年収どころの騒ぎじゃありませんね。個人単位では,払えば絶対にイベントを防げるわけでもないし。

― 75歳男性の520万円も,深刻な問題ですよ。75歳は就労人口ではありませんから,保険料はかかりませんし医療費は1割もしくは3割負担のみ,ほとんどが「持ち出し」なんですね。就労人口はますます減っていきますから,まず支えきれない。年金もあるし。

↑なんだか世知辛い話ですが,コスト効果も医療の大事な要素なんですね。薬価にもよるのでしょうけれど・・・。

― その通りです。薬価が低く,安全性が認められている場合は,たとえ得られる効果は小さくても,投与することの妥当性は増すわけですね。すべての治療にいえるのは,有用性と害,コストの三つをセットで考えなければいけない,ということです。

↑名郷先生がいつもおっしゃっていることですね。なんだかようやく理解できた気がします。

※この内容は,2013年6月刊行予定の本誌第3号に,詳細を掲載する予定です

次回の更新では・・・
『PROBE試験について考えてみよう☆アウトカム次第では捨てたものじゃない』
についての紹介する予定です!

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