2012年12月18日火曜日

アテローム血栓性脳梗塞の既往がある心房細動に対し,強力な抗血栓療法を行うべきか? 「CORE Journal循環器」サイトにて全文公開! http://goo.gl/FcPeI


「CORE Journal 循環器」編集部です!

2号刊行に伴い,遅ればせながらWebサイトを更新いたしました!
タイトルにありますように,

 CQ7 アテローム血栓性脳梗塞の既往がある心房細動に対し,強力な抗血栓療法を行うべきか? 

についての記事全文がご覧いただけます!! 
こちらをクリック
CORE Journal循環器Online










『CQの背景』,そのCQに対する『回答(CORE)』が必見なのはもちろん,

『エビデンス解説』では「副作用についての考え方の解説」 を掲載。


『VOICE』では2名の先生がそれぞれ

「究極の選択なのか妥協なのか?」

「抗血小板薬の代わりに抗凝固薬を選択できるが,逆は真ならず」

というタイトルでコメントをご執筆くたさっており,こちらも全文ご覧いただけます。

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現在編集部では3号制作に向けて動き出しております!
更新が遅々としておりますが,
また裏話など更新していく予定です。 ご期待ください!!






2012年11月21日水曜日

CORE Journal 循環器 no.2 (2012年秋冬号)12月5日刊行!

2012年秋冬号(第2号)の表紙はブルーです!
今日の修正で最後・・・校了です。重大な誤植はありませんように。
「CORE Journal 循環器」編集部です!

更新が滞りがちになっておりましたが,単にさぼっていたわけではなく,,2号刊行に向けて忙しなく動いておりました!

2号刊行はいつか? 多数のお問い合わせをいただいておりましたが,12月5日刊行です!

紀伊國屋BookWebにてご予約も可能です。
(もちろん送料無料です!!)


今号掲載のCQ & COREは・・・

▼動脈硬化
CQ 1 透析患者における心血管イベント抑制に脂質低下療法は有効か?
CQ 2 HDL-Cを上昇させる治療は心血管イベントの抑制に有効か?
CQ 3 糖尿病の脳・心血管イベント一次予防としての抗血小板薬の有用性は?
CQ 4 高血圧治療の降圧目標に下限値の設定は必要か?

▼虚血性疾患
CQ 5 CABGはオフポンプとオンポンプ,どちらが有効か?
CQ 6心房細動合併の冠動脈疾患に対して,抗血小板療法に抗凝固療法を追加すべきか?
CQ 7 アテローム血栓性脳梗塞の既往がある心房細動に対し,強力な抗血栓療法を行うべきか?

▼心不全
CQ 8 COPD を合併した心不全患者への適切な治療法とは?
CQ 9 急性心不全での点滴強心薬の使用方法とは?

▼不整脈
CQ 10 心房細動の薬物治療はレートコントロールかリズムコントロールか?


ひとつひとつのCQに関して,創刊号にも増して多くのエキスパートの先生方に
ご協力いただくことができ,ますます充実した内容となっています。

そして,From the investigators では
2012年のESC Hot Lineセッションで発表されたWOEST試験について
この研究の責任医師のJurri n M. Ten Berg氏にお話を伺いました。

ぜひお手にとってご覧ください!
まずは簡単ながらながらお知らせでした!

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今回は,「榊原カンファレンス」はお休みさせていただきました。
第3号で「拡大版」を掲載予定です。

2012年10月16日火曜日

何を信じて何を疑えばいいですか? 第5弾:「有意差がない=無効」ほんとにそれでいいですか?

今回も「CORE Journal 循環器」第2号についての名郷先生との面談での内容を一部ご紹介していきます! 
今回は,「有意差のないデータ」についてです。最近増えてきている,有意差が得られないデータをどうとらえていけばいいのでしょうか。

第5弾:「有意差がない=無効」ほんとにそれでいいですか?

CORE Journal 循環器 no2 (2012年秋冬号)で取りあげる,
CQ3糖尿病の脳・心血管イベントの一次予防としての抗血小板薬の有用性は? 
で検索した,メタ解析について伺っていたときのことです。

― この5件のRCTのメタ解析と,6件のRCTのメタ解析の主要心血管イベントが減る方向で一貫していますね。

↑確かに,ともにアスピリンを投与した介入群でイベントが減少しています。でも先生,信頼区間をみても有意な差は認められなかったようですが・・・。

― まぁそうですが,このような結果をどう考えるかは非常に重要だと思いますよ2つのメタ解析で,ともに主要心血管イベントリスクが10%程度減る方向で一貫しているわけですからね。

↑なるほど・・・。このことをどのように考えたらよいのでしょう。

― 個別の患者で考えたときに,1割心筋梗塞が減るならば,費用と副作用を考えても飲みたいと考える患者はいるような気がしますね。

↑そうか・・・。ここでもやはり,副作用・費用などとの兼ね合いもありますね。

― 「10%のリスク低下」が介入に値するか,しないのか,ということは,もちろんそのイベントの内容,副作用などとの兼ね合いがありますね。ただここで強調したいのは,「有意差がないから無効」とだけ短絡的に考えるのはもったいないということです。

これはちょっと話が逸れますが,頸動脈エコーで大きなプラークがみつかったようなハイリスクの患者に対して,アスピリンを処方するという道筋があるならば,ローリスクの中のハイリスク患者を同定してRCTを行ったらどうなるでしょうか。気になるところですね。


CORE Journal循環器 no.2の編集工程も佳境に入り,ゲラとにらめっこの日々を送っています。。何度みても,あらら・・・なミスがみつかるのはなぜ??
ブログの更新が滞りがちですが,続けていきたいと思いますので,どうぞよろしくお願い致します!!


2012年9月27日木曜日

何を信じて何を疑えばいいですか? 第4弾:副作用は不確かでも考慮する

名郷先生との面談では,『CORE Journal 循環器』で検索された論文をその場でお見せして,「思いついたこと全部を教えて下さい」とお願いしています。本誌で掲載する各CQのミニコーナー「エビデンス解説」でもご紹介しますが,このブログでは,できるだけ先生の生の声をお伝えできたらいいなと思っています。(編集部員のセリフは,『できる編集者』に見えるように脚色していますが,どうかご容赦下さい。ほんとはついていくだけで必死です。)

今回は,治療介入による副作用の話題です。最近は,抗血栓療法の新しい話題が増え,ベネフィットがリスクを上回れば治療は正当化されると言われることが増えてきました。「出血は増えるが,心血管イベントは有意に抑制された」といった研究をみかけると,私たちは,「だから何?いいってこと?ダメってこと?」と,ここで完全に思考停止に陥り,「専門医の先生がいいって言ってたし」で済ませる,という何とも情けないことを繰り返していました。

クリアに判断できる秘訣なんてものはおそらく存在しないことは,わかっています。でも,もうちょっと読めるようになれないかな・・・と,名郷先生に聞いてみました。

有効性は疑いの目で厳しく吟味し,副作用は不確かでも考慮する

CORE Journal 循環器 no2 (2012年秋冬号)で取りあげる,
CQ6:心房細動合併の冠動脈疾患に対して,抗血小板療法に抗凝固療法を追加すべきか?
で検索した論文について伺っていたときのことです。

-有効性は疑いの目で厳しく吟味し,副作用は不確かでも考慮するのが,臨床的立場だと思うんですよ

↑名郷先生が常日頃おっしゃっていることですよね・・・。有効性に対しては,有意差があるか,デザインはどうか,などなど色々な吟味のポイントがあると思うのですが,副作用のデータのみかたってあるのでしょうか。

-ケースバイケースで説明は難しいですけど,一つ単純にいえるのは,95%信頼区間の悲観的なほうの数字をみることです。

↑経口抗凝固薬長期服用のステント留置例に,抗凝固薬+抗血小板薬2剤(3剤併用群)と抗血小板薬2剤(2剤併用群)を比較した研究のメタ解析では,大出血のオッズ比が2.12,その95%信頼区間が1.05-4.29になっています。先生がおっしゃっているのは,4.29のことですね。

-そう。大出血が4.29倍かもしれない。

↑でも,オッズ比の数値は2.12ですし,真実は4.29倍よりも2.12倍に近いのではないでしょうか。

-95%信頼区間は,95%の確率で,この幅のなかに真実が存在することを示すものであって,真ん中ほど真実に近いということではないのです。この区間ならどこに真実があってもおかしくない。だったら,大出血という危険な副作用は,4.29倍と思っておいたほうがよいと思いませんか?

↑私が患者だったらきっと,4.29倍という最悪の可能性が気になると思います。

-患者さんの価値観もあるでしょうけれど,少なくとも臨床医は,副作用に対しては最悪の可能性を考慮したほうがいい。

↑そう考えると,先生,大変です。脳梗塞のオッズ比は0.38,その95%信頼区間は0.12-1.22です。有効性はあるともないとも言えないのに大出血は4.29倍かもしれない。

-こういった場合は,オッズ比などの効果指標だけではなく,実際におきたイベント発生率を確認してみましょう。

↑ええと,脳梗塞発生率は3剤併用群0.8%,2剤併用群3.3%です。大出血発生率はそれぞれ4.1%,1.9%。

-2剤併用ではなく3剤併用にしたら,脳梗塞は100人中2.5人減って,大出血は2.2人増える。そういう見方もできますよね。

名郷先生は,単独の臨床試験データから「どちらの治療を選ぶべき」というお話は,あまりなさいません。名郷先生との面談後はいつも,Gordon H. Guyatt先生へインタビューしたときの,「エビデンスそのものは,医師が何をすべきかという臨床的判断を与えてはくれません」というの言葉を思い出してしまいます(詳しくはGuyatt先生へのインタビュー記事)。

次回も,「何を信じて何を疑うシリーズ」が続きます!これまでの更新内容については,ブログのもくじをご覧下さい。

2012年9月20日木曜日

何を信じて何を疑えばいいですか? 第3弾:傾向スコア(プロペンシティースコア)「これでもうRCTはいらない?!」



1弾「アヤシイ」メタ解析2NNT の「ツボ」に引き続き,今回もCORE Journal 循環器」第2についての名郷先生との面会での内容を一部ご紹介していきます!
 
今回は,「傾向スコア(Propensity Score;プロペンシティースコア)」についてです。「傾向スコア」って実際のところ何なのでしょう?

3弾:傾向スコア「これでもうRCTはいらない?!」

 誌2号CQ3:急性心不全での点滴強心薬の使用方法とは? で検索した,フィンランドの観察研究について伺っていたときのことです。

-う~ん。この論文は,t検定で解析をしているようです。多変量解析をしておらず,交絡因子の調整はされていませんね。

↑・・・つまり・・どういうことでしょう・・・。

強心薬を投与された患者は2割程度亡くなるが,それが薬の投与のせいなのかはわからない。単に強心薬を投与されるような人は重症な人が多かったということしかいえない,ということですね。

↑強心薬が投与された患者と,対照の患者では背景がかなり異なる可能性があるということですね。

-そうですね。ただ,このADHERE registry傾向スコアで解析しているので,とても参考になりそうですよ。

↑先生,最近傾向スコアってよく耳にするのですが,実際どういうものなんでしょうか。

観察研究の場合,それぞれの薬剤が投与された人の背景は均一ではないですよね。ですから,このように2群を比較していたはずなのに,背景が不均一であることによって結果が影響されてしまい,ともすれば誤った結論が導かれてしまうことがあります。
 ADHERE registryを例として簡単にいいますとドブタミンを処方されている患者の背景から,交絡因子を調べて,重み付けをして,ドブタミンの処方されやすさをスコア化します。そうして,ドブタミンを投与されていない人で同様の背景をもつ人を選び出し,比較する ということですね。

↑なるほど! そうすればある程度,背景が揃ったものとして2群を比較できるわけですね。では傾向スコアで解析さえすれば,もはやRCTは必要ない・・・?

-一時はそういう話もありました。ただ,観察研究とRCTでは異なる結果が出ている場合もあります。例えば,閉経後女性のホルモン補充療法に関する研究では,観察研究では心筋梗塞を減らすという結果が出たのに, RCTではむしろリスクを増やす結果が出ました。
 ただ,倫理的に,費用的に,他にも様々な問題があってRCTが行えない場合がありますよね。観察研究で傾向スコア解析が行われているかどうかというのは,その文献の信頼度を測るうえで重要なポイントであることは間違いないと思います。

 名郷先生との面会での目から鱗のお話,次回も続きます! お楽しみに!

2012年9月13日木曜日

何を信じて何を疑えばいいですか? 第2弾:NNTの「ツボ」 結局どう役立てる?

前回に引き続き,「CORE Journal 循環器」第2号についての名郷先生との面会での内容を一部ご紹介します! 
今回は,NNT(numberneeded to treat)についてです。(NNTは,治療必要数ともいう指標で,例えば「NNTが10」ということは,「1人の患者のイベントを抑制するのに10人への治療が必要と推定される」ということを意味します。)
 「CORE Journal 循環器」本誌でも,随所に登場するこのNNTについてどう解釈すべきなのでしょうか・・・。

第2弾 NNTの「ツボ」 結局どう役立てる?

CQ1:透析患者における心血管イベント抑制に脂質低下療法は有効か?
で検索した論文での“4.9年間のNNT(95%信頼区間)66(24 to -91)”という値について,それをどう解釈すべきか伺ってみたところ・・・

実際NNTだけで解釈するのは無理ですね!

↑ ええ?!!! だってそんな・・・ じゃあどうすればいいんだ(焦)。。

NNTの解釈は,副作用やコストとの兼ね合いだったりしますからね。例えば副作用が0で薬価がすごく安いとなったら,NNTがたとえ100でも1000でも投与は妥当化される,そう思いませんか?

↑ 確かに・・・。患者さんが受ける利益と害のバランスを考えなくてはいけないということですね。

―“NNTは,その臨床試験が置かれた状況の中でしか解釈できない”んですね。だから目の前の患者さんのリスクが小さい,仮に臨床試験対象者のリスクの0.5倍だとしたら,「NNT=66÷0.5=132」となり,記載のNNTより大きくなる,つまり効果サイズは小さくなるでしょう。

↑ なるほど。さらに,個別の患者さんに合わせて解釈していかなくちゃいけないんですね。。

― そうですね。だからNNT66という数字に対して害とかコスト,さらに患者さんのリスクなどを加味して判断するわけです。

↑ (なんだか少し気が遠くなってきた・・・。)

―実際に利益と害のバランスを判断するための指標はあります。LHH(likefood of being helped or harmed)というものです。NNTとNNH(何人治療すると一人有害なイベントが起こるか)の比をとって,患者の害と比較して何倍益になりそうか,を示す指標です。

“LHH=(1/NNT)/(1/NNH)=NNH / NNT ”

で表されます。
例えば,心筋梗塞のNNTが20,消化管出血のNNHが100とした場合,LHH=100/20=5ですね。

↑ なるほど! これは利益が害の5倍であるということでいいんでしょうか?

― そう単純には判断できません。それぞれのアウトカム(この場合は心筋梗塞と消化管出血)の重要性により重み付けも異なるでしょうし,前述した個別の患者さんのリスク,コストの問題なんかもあります。例えば・・・ACE阻害薬で心不全がどのくらい予防できるか,ということを検討した場合,心筋梗塞は重み付け10としたら,咳はまぁ0.3かな,,みたいな感じですね。結局NNTは絶対リスクから算出している指標ですから,治療効果を調整しなくてはいけないんですね。そこが相対リスクとは違うところです。

↑ むむむ。たしか絶対リスクと相対リスクは別々にみて評価しなくてはいけないんですよね,,,たしか本で読んだことがあります。。

―例えば,透析患者でアウトカムが動脈硬化性イベントというと大体15%とか起こりますね。これがある治療によって15%から10%に減るとなると,リスクが10分の1の集団で同じ治療を行っても,大体1.5%が1%に減るということになり,相対リスクは一貫しています。だからあまり状況に応じて解釈を変える必要がないんです。

このほかにも,まだまだ目から鱗 のお話がつぎつぎと。次回以降の更新でご紹介します!


2012年9月7日金曜日

何を信じて何を疑えばいいですか? 第1弾:「アヤシイ」メタ解析

「CORE Journal 循環器」も,第2号発行にむけて制作が佳境に入ってきました!
執筆をお願いした回答者の先生からは,続々と原稿が届いています。(第2号のCQはこちら)

昨日は,名郷先生にエビデンステーブル(文献概要)の内容確認をお願いするため,武蔵国分寺公園クリニックにお邪魔しました。先生の診療が終わった後,みっちり3時間・・・
(先生ごめんなさい)

今回も,先生の「これ,いい論文ですね」「この論文,あやしいですね」「このデータ,ほんとかな~」というお話がすごすぎて!詳しくは,本誌の「エビデンス解説」というミニコーナーで紹介しますので,ご覧いただけると嬉しいです。このブログでも一部を紹介していきたいと思います!

第1弾 「アヤシイ」メタ解析

CQ2:HDL-Cを上昇させる治療は,心血管イベントの抑制に有効か?
で検索した,5件の論文について伺っていたときのことです。

メタ解析がRCTよりエビデンスレベルが高いなんて,嘘ですよ

↑ええ?!!! だってそんな・・・ 色々な本に,メタ解析がいいって書いてありますし(焦)。。

― 分類上,エビデンスレベル「1a」がRCTのメタ解析,「1b」がRCTとされていていますが,aとbはあくまでも『分類』にすぎません。RCTのメタ解析とRCTに,デザイン上の優劣はないんです。

↑知りませんでした。いずれもレベルの高いエビデンス,ということなのですね。

― むしろ,深く考えずに「メタ解析」に飛びついてしまうのは危ないんですよ。メタ解析はさまざまな研究の寄せ集めですから,バイアスが入りやすい。専門的には,「内的妥当性が低い」といいます。たとえば,異なる薬剤を用いた試験を詰め込んだメタ解析からは,参考程度の答えしか得ることができません。

― そうですね。同様に「HDL-C上昇のための薬物介入」と「プラセボ」を比べたRCT44件(約11万人)のメタ解析もちょっとアヤシイですね。この研究では,両群のイベント発生の差が0.1%しかないのに,P値には有意差がついています。母集団が大きいと,このような結果が出ることがよくあります。このときは,「有意差があった」ことより,「差が0.1%しかなかった」ことに注目すべきでしょう。

↑そんな見方,したことなかった。。「メタ解析」+「有意差」=すごい,と思っていました。まぜこぜのメタ解析よりは,大規模のRCTのほうがよいのかなあ。

― まぜこぜのメタ解析の結果が大規模RCTで覆るということは,これまでもさんざん繰り返されてきました。メタ解析でも,どんな研究が集められたのかが大事なんです。
「RCTのメタ解析」と書かれていても,「RCTのサブグループのメタ解析」だったり,「RCT対象者全体の観察結果のメタ解析」だったりすることがあります。これはエビデンスレベル1aの「RCTのメタ解析」とは異なるものとして,読んでいく必要があると思います。

↑そうなんだ・・・ これは忘れないようにしなければ。

この記事の掲載号の詳細はこちら

このほかにも,目から鱗のお話がつぎつぎと。次回以降の更新でご紹介します!



2012年9月3日月曜日

こぼれ話☆ 臨床試験のp値がEBMのすべてではない

雑誌「CORE Journal 循環器」は,編集委員の先生方の絶大なるご協力により立ち上がりました。編集委員会では,次から次へと出てくる先生方のアイディアに・・・,編集部が圧倒されることもしばしば。

そんななか,ある先生がこんなことをおっしゃいました。
有意差がつかなければ,どちらの薬剤が好ましいかなんてことは言えないのでしょうけれど,現実に患者さんがいらして,二者択一で薬剤を選ばなければならないとき,少しでもイベント発生率が低かった薬剤を選びたくなるのは,臨床医の心理としてあると思います。
でも,患者さんの特性を良く把握していれば,「その患者さんでは」どちらがより好ましいのかが見えてくることがあるんです。臨床試験の数値がEBMのすべてではない。もっといえば,P値や信頼区間だけでEBMを実践することはそもそも不可能なのです。臨床試験の結果を,個々の患者さんに照らし合わせ,臨床上の意志決定に適切に生かす能力が必要で,それを下支えするのが臨床医としての「力量」や「経験」なんですね。
この雑誌では,「力量」「経験」ともに優れた専門医が,臨床試験の結果を自身の臨床に生かす過程を見せていきましょう。その論理展開から学べることは大いにあると思います。
なんだか胸にぐっときてしまいました。
これが「CORE Journal 循環器」の原点となりました。

2012年8月30日木曜日

検索結果がどうもイマイチ・・・と思ったら 優れワザ1:MeSH termをつかうといいことがあります!

Clinical Queriesがあれば無敵!と思ったのもつかの間・・・,「あの有名な臨床試験がどうしても引っかかってこない!」ということが本当によくありました。検索ワードを試行錯誤しても,どうもイマイチ。

そんなときにオススメの優れワザをご紹介します。
現在制作中の「CORE Journal 循環器 no.2」(2012年10月下旬刊行予定です)で取りあげる,「急性心不全での点滴強心薬の使用方法とは?」というCQについて検索していたときのことです。

「強心薬」を,"inotropic drug" として検索ワードに加えてみたところ,どうもしっくりいかない。迷走しているとき,以前,名郷先生に「"MeSH Detabese"に登録されている用語を選びましょう」とご指導いただいたことを思い出しました。

MeSHとは,Medical Subject Headingsの頭文字をとったもので,PubMedでは索引のようにして使われているそうです。収載された論文それぞれに,順次,MeSH termがつけられていき,Clinical QueriesでもMeSH termをひもづけた検索が行われます(気になった方は,Clinical Queriesで検索したときの"Search details"をチェックしてみて下さい!【参考】)。

索引になっている用語,つまりMeSH termになっている用語を使ったほうが,うまくいきそうですよね!ということで・・・ 強心薬(cardiac tonic? cardiotonic drug? inotropic agents?)はMeSH termとしてどのように登録されているのか,調べてみました。


調べ方は簡単です。MeSH Databaseに入力するだけ!
試しにcardiotonic drugと入力してみると・・・










Cardiotonic Agentsと登録されていることがわかりました。(シソーラスで拾ってくれるんですね!すごい!)

このように,検索でつまづいたときはMeSH Datebaseで用語を確認してみると,案外うまくいったりしますので,是非試してみて下さい。

でも,MeSHにも実は弱点が・・・。
次回の更新では,MeSHについて,もう少しご紹介する予定です。

2012年8月27日月曜日

PubMed検索ってどうやればいいですか? ステップ5:予後や副作用について知りたいとき

Clinical Queriesでの検索にも慣れてきた,と感じてきたのもつかの間,「どうしても疑問に合う文献がみつからない!!」ということが出てきました。

しょうがなく,Clinical Study Categoriesの『Scope』を,narrow(漏れがある可能性はあるが,適切でない文献は少ない)から,broad(適切でない文献が含まれる可能性はあるが,漏れは少ない)に変えて,ひぃひぃ言いながら膨大な数の文献リストと格闘していました・・・。アブストラクトを読むだけでも膨大な時間がかかることもしばしば。

これではいかんと,あるとき名郷先生に相談すると,

「これは,『Category』をTherapyではなく,Etiologyか,Prognosisを使うべきです」

と教えていただきました。

「え・・・?カテゴリー? 何でしたっけそれ。」 あろうことか,編集部ではいつもClinical Study Categoriesの『Category』を“Therapy(治療)”にしていたまま,検索を行っていたのでした。『Category』を,よくよく見てみると,確かにほかにも

  • Etiology(病因,副作用) 
  • Diagnosis(診断) 
  • Prognosis(予後) 
  • Clinical Prediction Guides(臨床予測指標)
というフィルターが並んでいました・・・。
  
早速,試してみました。例えば,糖尿病患者で,アスピリンを投与された方の重大な出血の頻度は? という疑問の場合,フィルターは“Therapy(治療)”よりも“Prognosis(予後)”にしたほうが,検索がうまくいくことがわかりました。

画面左中央の『Category』で,フィルターが選択できます

「疑問の種類によって,求めるエビデンスの種類も異なる」

ということを考えもしていなかったのです。例えば,“予後”に関する疑問を検討する場合は,RCTより,むしろコホート試験が適しているそうです。

これ以降,編集部では挙げられた疑問の種類が “治療”についてのものなのか,それともそれ以外の “診断” ,“予後”,“副作用”なのか・・・?についても確認しながら検索するようにしました。

ということで・・・ ステップ1234,5の5回にわたり,Clinical Queriesを用いた検索の基本を紹介してきました。でも実際にやってみると,そんなにすんなりとはいかず・・・,名郷先生には何度もお世話になりました。今後,「困ったときの解決法」についても紹介していきたいとおもっています。次回は第一弾として,MeSH termについてご紹介します!


「予後」について検討している本誌記事【PDF全文】はこちら 
no.3 2013 春夏号

「予後」について検討している本誌記事はこちら 
no.5 2015 春夏号
  CQ 3 肥満症に対する外科治療の効果は?

no.2 2012 秋冬号