引き続き名郷先生の面談から,臨床試験と実地臨床のはなしをご紹介します。
臨床試験と実臨床のギャップについて考えよう☆実地臨床はRCTのようにいかない
本誌no.4 CQ7:携帯型呼吸補助装置ASVは心不全に対する治療となりうるか?
で検索した五つの研究について伺っていたときのことです。
― 五つのうち四つは非ランダム化比較試験ですね。「同意が得られた患者」,もしくは「実施可能だった患者」にASVが実施されています。いずれもASVの有用性が示されているようですが,まだこれだけでは結論は得られないでしょう。
↑ ランダム割り付けが行われていないことによるバイアス,の話ですね?
― ところで,ランダム割り付けをしないとどのようなバイアスが生じるか,説明できますか?
↑ 両群の患者背景が均一にならず,それが結果に影響しうるということでしょうか?
― そうですね。今回のように「同意が得られた患者」には,もともと治療意欲が高く,健康への関心も高い患者さんが多くなることが予想されます。ですからよい結果がでやすい。有用性を過大に評価されてしまうのです。
↑ たしかに治療意欲や健康への関心は,両群で均一だったかどうかは,「baseline characteristic」でも確かめようがないですし。。どの程度関与したかもわからないんですね。
― そうですね。きちんとした手順を踏んだランダム化比較試験(RCT)ではそういったバイアスが除かれるわけです。ただ,RCTにはまた別の課題があります。RCTに参加するのは,基本的に治療意欲や健康への関心が高い人がほとんどです。医師の指導にきちっと従ってくれる,模範的な患者さんなわけですよ。
↑ 薬もちゃんと飲んでくれるし,サボらず通院してくれる・・・
― でも実際には,そうでない患者さんっていっぱいいるんです。さらに,実地臨床では,必ずしも臨床試験のように専門性の高い医療者ががっちりフォローアップするわけでもない。だから,RCTと実地臨床にはものすごいギャップが存在するんですね。とくに治療の安全性は,RCTで良好とされたとしても,それが実地臨床で通用するかを確認していく必要があるんだと思います。
※この内容は,本誌第4号に,詳細が掲載されています→ CQ7
次回の更新では・・・
『サブグループのメタのいけないところ☆治療効果が過大評価されがち』
について紹介する予定です!
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