引き続き名郷先生の面談から。論文の読み方のポイント,まだまだ続きます!
糖尿病予備軍でインスリンが効かない理由を考えてみよう☆有用性が害に相殺される
CQ3:インスリンは動脈硬化を促進させるか?
で検索した,ORIGIN試験[PMID:22686416]について伺っていたときのことです。
― インスリンは,やっぱり何かしてるんでしょう。
↑???
― だから,インスリンは何かいけないことをしているんだと思います。動脈硬化なのか癌なのかわからないけど。
↑ ええと,ORIGIN試験は糖尿病予備群または初期の2型糖尿病を対象に,インスリンと標準治療を比較した試験で,一次エンドポイントや死亡率のハザード比はほぼ1,有意差もついていません!それなのに・・・(差別だ・・・)
― うーん,説明するのは難しいんだけど。インスリンというのは,糖尿病に非常に良く効く薬ですね。でも,リスクの低い人には有効性が示せなかった。これがどういうことかわかりますか?
↑ リスクの低い人には効きにくいからじゃないでしょうか。
― そうじゃないんです。高リスクの人,たとえば何もしなければイベントを10%起こすとします。薬剤でそれが5%に減ったら,相対リスクは0.5ですね。低リスクの人では1%から0.5%になったとしましょう。相対リスクはやっぱり0.5です。
↑ あ,そのお話しは,以前に伺った「相対リスクは,重症度にかかわらずある程度一貫する」というやつですね!
― そうそう。でもインスリンはそうじゃなかった。これは,有用性を相殺してしまう潜在的な「害」があると考えられるんです。治療による害は重症度にかかわらずある程度は一定の割合で生じます。たとえば,0.5%を1%に増やしてしまう害があったとしたら,低リスクの人でみられた有効性は相殺されてしまうでしょう。でも,高リスクの人の場合はあんまり影響ないですよね。
↑ たしかに理屈はそうですけど。
― 低リスク患者を対象にすると有用性が害で相殺されてしまうことは,結構あるんです。今回のケースで,その害が動脈硬化なのだとしたら,「有用性」が目減りしても不思議ではありませんよね。
↑ そうなのですね。高リスクの人では有用性に隠れていた害が,低リスクの人では現れる。なるほど,わかってきました。
※この内容は,2013年6月刊行予定の本誌第3号に,詳細を掲載する予定です
次回の更新では・・・
『高カリウム血症という「害」について考えてみよう☆実臨床ではもっと多い』
について紹介する予定です!
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