2012年9月13日木曜日

何を信じて何を疑えばいいですか? 第2弾:NNTの「ツボ」 結局どう役立てる?

前回に引き続き,「CORE Journal 循環器」第2号についての名郷先生との面会での内容を一部ご紹介します! 
今回は,NNT(numberneeded to treat)についてです。(NNTは,治療必要数ともいう指標で,例えば「NNTが10」ということは,「1人の患者のイベントを抑制するのに10人への治療が必要と推定される」ということを意味します。)
 「CORE Journal 循環器」本誌でも,随所に登場するこのNNTについてどう解釈すべきなのでしょうか・・・。

第2弾 NNTの「ツボ」 結局どう役立てる?

CQ1:透析患者における心血管イベント抑制に脂質低下療法は有効か?
で検索した論文での“4.9年間のNNT(95%信頼区間)66(24 to -91)”という値について,それをどう解釈すべきか伺ってみたところ・・・

実際NNTだけで解釈するのは無理ですね!

↑ ええ?!!! だってそんな・・・ じゃあどうすればいいんだ(焦)。。

NNTの解釈は,副作用やコストとの兼ね合いだったりしますからね。例えば副作用が0で薬価がすごく安いとなったら,NNTがたとえ100でも1000でも投与は妥当化される,そう思いませんか?

↑ 確かに・・・。患者さんが受ける利益と害のバランスを考えなくてはいけないということですね。

―“NNTは,その臨床試験が置かれた状況の中でしか解釈できない”んですね。だから目の前の患者さんのリスクが小さい,仮に臨床試験対象者のリスクの0.5倍だとしたら,「NNT=66÷0.5=132」となり,記載のNNTより大きくなる,つまり効果サイズは小さくなるでしょう。

↑ なるほど。さらに,個別の患者さんに合わせて解釈していかなくちゃいけないんですね。。

― そうですね。だからNNT66という数字に対して害とかコスト,さらに患者さんのリスクなどを加味して判断するわけです。

↑ (なんだか少し気が遠くなってきた・・・。)

―実際に利益と害のバランスを判断するための指標はあります。LHH(likefood of being helped or harmed)というものです。NNTとNNH(何人治療すると一人有害なイベントが起こるか)の比をとって,患者の害と比較して何倍益になりそうか,を示す指標です。

“LHH=(1/NNT)/(1/NNH)=NNH / NNT ”

で表されます。
例えば,心筋梗塞のNNTが20,消化管出血のNNHが100とした場合,LHH=100/20=5ですね。

↑ なるほど! これは利益が害の5倍であるということでいいんでしょうか?

― そう単純には判断できません。それぞれのアウトカム(この場合は心筋梗塞と消化管出血)の重要性により重み付けも異なるでしょうし,前述した個別の患者さんのリスク,コストの問題なんかもあります。例えば・・・ACE阻害薬で心不全がどのくらい予防できるか,ということを検討した場合,心筋梗塞は重み付け10としたら,咳はまぁ0.3かな,,みたいな感じですね。結局NNTは絶対リスクから算出している指標ですから,治療効果を調整しなくてはいけないんですね。そこが相対リスクとは違うところです。

↑ むむむ。たしか絶対リスクと相対リスクは別々にみて評価しなくてはいけないんですよね,,,たしか本で読んだことがあります。。

―例えば,透析患者でアウトカムが動脈硬化性イベントというと大体15%とか起こりますね。これがある治療によって15%から10%に減るとなると,リスクが10分の1の集団で同じ治療を行っても,大体1.5%が1%に減るということになり,相対リスクは一貫しています。だからあまり状況に応じて解釈を変える必要がないんです。

このほかにも,まだまだ目から鱗 のお話がつぎつぎと。次回以降の更新でご紹介します!


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